放課後の学校
部活があれば部活に。
補習があるなら補習に。
何もなくてさっさと帰るなら帰る。
それぞれが授業から開放された時間をそれぞれ有意義に過ごす。
出来ることなら俺もさっさと帰りたい。
それでもそれが出来ない。
なぜなら・・・――
「・・・遅い」
何故か毎日のように応接室に呼び出されているからだ。
***心地よい時間***
もしこれが修行というなら嫌だけどまだマシかもしれない。
何しろただソファーに座ってボーっとしているだけだ。
何のために呼び出されたのか分からない。
何で呼び出したのか聞けばいい、と言われても俺には絶対出来ない。
むしろ出来るならやってくれ。
時間がゆっくりと過ぎてはっきり言うと時間の無駄だ。
・・・・言わないけど。
「失礼します」
ゆっくり静かにドアを開ける物音を立てないように。
前に来た時、偶々ひばりさんが寝ていたのを起こしてしまい・・・
シャーペンが飛んできた・・・
もちろんペン先を向けて。
ちなみに0,5ミリだ。
トンファーじゃないだけマシだと思っておこう。
「遅いよ」
今日は起きていたようだ。
寝起きなのかも知れない・・・機嫌が悪そうだ・・・。
・・・いつもかもしれないけど。
「何か言った?」
「い、いえ、何も・・・」
・・・あれ?
俺今声に出して言ったっけ?
・・・・・マジで怖いんですけどっ!
「・・・・お茶淹れますね」
ただすることがないだけだけど・・・
ひばりさんは仕事があるし邪魔したら悪いから・・・。
「今日はコーヒーと紅茶どっちがいいですか?」
ちなみに昨日はコーヒーだ。
しかもブラック・・・。
「・・・紅茶」
「分かりました」
紅茶っと・・・えーっと、ダージリンでいいのかな?
・・にしてもこんなにも種類があってどうしろというんだろう?
しかもなんか増えてる・・?
紅茶を淹れながら一人悶々と考え込んでいた。
不意に何かが後ろから抱きついてきた・・・。
「・・・・・・」
何か・・それはひばりさんしかいないだろう・・。
他の人だったら逆に怖い・・・。
ってそうじゃなくて!
「あ、あの・・ひばりさん?」
あまりに急な事で頭が回らない・・。
ついでに心臓もすごい勢いで動いている・・・。
聞こえたりしていないか不安で更に早くなる・・。
「ど、どうしたんですか・・?」
「・・・・・」
返事がない・・・
動かない・・・
振り向くべきなのか・・?
「――・・・・・・。」
何かを小さな声で囁いた。
「え・・・?」
「・・・・もういい」
ため息と共に拗ねたような声・・・・。
もしかして、怒らせた・・・?
「え、え?」
「五月蠅い」
体が離れていく。
ホッとしたような寂しいような・・・
・・・・?なんで寂しい?
まだうるさく動き続ける心臓を押さえるように服の上がら胸の辺りを掴んだ。
それでも収まることはなかったけど。
体が急にクルリと回って目の前にひばりさんがいた。
・・ち・・・近い・・・
また心臓が高鳴り始めた・・・。
更に顔が近くなって思わず目を閉じる。
そっと唇に温かいものが触れた。
「・・・・え・・・?」
驚いて目を開けると真摯な顔つきをしたひばりさんの顔があった。
思わず口を少し開けるとそこから生き物のようなものが入ってきた。
「んっ・・・」
苦しくて息をしようと口を開けるともっと深く入ってくる・・・。
まるで食べられているようで、頭がボーっとしてくる。
漸く開放されると体に力が入らなくてその場で崩れるように座り込んでしまった。
「・・・抵抗しないの・・?」
けして優しいとはいえない声が降ってきた。
「あ・・・」
抵抗なんて思いもつかなかった。
ただ心地よいとしか感じない優しさ・・・。
「嫌悪感は無かった・・です」
むしろ気持ちよくて何も考えられなかった・・・。
「ふぅん・・」
少し嬉しそうな声・・・
見上げてみるけど逆光で表情までは分からない。
「お茶、早く淹れてよね」
何もなかったように元の場所に戻ると仕事を始めた。
「・・・はい」
お茶を淹れてまたいつものようにソファーでボーっと過ごす。
何も変わらない、いつものように時間だけがゆっくりと過ぎていく。
少し疲れがたまっていたからなのか緩やかな眠気が襲ってきた。
少し、だけなら・・・いいかな・・・
瞼がゆっくりと落ちてゆく。
「・・・・・好きだよ・・・綱吉」
耳元で囁かれた優しい声は。
夢うつつの中で聞こえた気がした・・・・
心地よい空気の中で
時間はゆっくりと過ぎてゆく・・・・
***END***
*あとがき*
元は嫌がらせから生まれた小説。
携帯の中から発掘しました。
古いものだから誤字脱字があるかもしれません。
一応探したけど、まだありましたらご報告お願いします。